変動金利で良い理由
ハイセルです。
前回の続きで、住宅ローンの変動金利と固定金利で、変動で良いと思う私の考えを下記7点解説してみたいと思います。変動で良いということは、なかなか金利は上がりにくいということです。なぜ金利が今後上がりにくいのかという解説となります。出来る限り分かりやすく書きたいと思いますが、少し専門的な部分が含まれるかと思います。よく分からないものは読み飛ばしてください^^;
①日本の債務の大きさ
②量的緩和
③人口の減少
④為替の影響
⑤インフレが進まない
⑥日本人の金融リテラシーの低さ
⑦残高が多い時に金利が低い方が良い
①日本の債務の大きさ
日本が金利を上げにくい大きな理由の一つとして、政府(国)が抱える借金(債務)の大きさがあります。下に掲載した表は、国内でどれくらいの生産力があるかを示すGDP(国内総生産)に対して債務比率で並べたランキングです。

皆さんもご存じの通り、日本は借金大国です。
『日本の借金時計』というサイトを見てみると感覚的に借金の多さが分かるのではないでしょうか?少し怖くなる人もいるのでは?
金利を上げるということは、より金利の高い国債を発行していくことになり、この借金の増え方がより早くなるということです。政府・日銀にとって大幅な金利上昇は容認できないと思われます。
②量的緩和
コロナショックの影響もあり、世界各国で量的緩和が行われています。量的緩和を行うと、金利が上がりにくいという側面があります。
量的緩和とは、沢山の紙幣を増刷してお金の流通量を増やし景気対策を行うことです。
どんなことをやっているかというと、
例えば、
・金融機関が保有する国債を日銀が買い取る
・株式(ETF)を買って、株価を支える
・全国民への10万円給付
・以前行っていたGO TO トラベル(イート、イベント)など
主にアベノミクス以降行っていた量的緩和は、金融機関が買っていた国債を日銀が買い取ることで、
金融機関にお金が余り、貸し出しを促進する。
金融機関にお金が余ることで、金利が低下するということです。
信用乗数による見通し
金融機関を含めた通貨流通量をマネタリーベースといいます。そして金融機関を含めない企業や個人の通貨流通量をマネーストック(マネーサプライ)といいます。
一般的には、このマネタリーベースを増やせば、貸し出しが多くなることでマネーストックも増えていきます。
↓金融機関を含めた通貨流通量(マネタリーベース)

↓金融機関を含めない企業や個人の通貨流通量(マネーストック)

見て頂いて分かる通り、マネーストックも増えています。コロナショック後は、特に一律の10万円給付やGO TOなどで増えました。これが金利にどう影響するのかと言うと、信用乗数というものを見ていきます。
マネーストック÷マネタリーベースを信用乗数(貨幣乗数)と言います。
つまり、信用乗数は金融機関から世の中にどのくらい通貨が出回っているかを示す数値です。こちらの黄色の線↓(2018年までのデータを記載しているものが探した中で最新でした)

ご覧のように、数値は右肩下がりで落ちています。市場に流れていない割合が増えているということが言えるかと思います。(だからこそ、全国民への一斉10万円給付やマイナポイント、GO TOなんちゃらという直接的にマネーストックが増える施策をやった部分もあるのかもしれませんね)
信用乗数が下がっているということは、世の中に流れずに金融機関に留まっている割合が増えているとも言えます。ということは、金融機関にお金が余るということは金利は下がる傾向にあるということですね。
『量的緩和のつけ』がやってくる
量的緩和の主な政策として、日銀が国債や株式(ETF)を買い入れていますが、買い入れした国債や株式(ETF)はどうなっているの?というお話をしたいと思います。
日銀は、経済の活性化のために、マネタリーベースを増やそうと『異次元緩和』と銘打って国債を買い入れているわけです。その中には、償還日(国債を現金化して返還しないといけない日)を迎える国債も当然沢山保有しています。
日銀「この国債は満期を迎えたから、政府さん支払ってください」
という感じで、もし政府に求めてしまうと、税金で返済するため、結果としてマネタリーベースやマネーストックを減らしてしまい、元も子もないことになってしまいます。
そのため、『日銀乗換』といって現金償還を行わずに、新たな国債として持ち直すことをします。そのため、ずっと持っておくことが出来るわけです。
但し、日銀がずっと保有だけして、今後返済しないことを良しとしてしまうと、日銀が保有している国債発行額分の負債が実質的になくなってしまい、バランスシートの負債部分がなくなったことで、突然通貨総量が増えたことになり、かつ今後も自由に日銀が国債を吸収することが出来る可能性が高い国として、世界から見られると一気に円の価値と信用を失います。
そうなってしまうと、取り返しのつかないハイパーインフレを起こす可能性があり、急激なインフレは、通貨価値を一気に下げるので結果的に国民の資産を奪うことになり、間接的にインフレ税というような形で国民は資産を減らしてしまいます。
そうならないように、景気を向上させインフレが少しずつ進んでくると、少しずつ保有している国債を金融機関等に戻し始めることが予想されます。これを『売り・オペレーション(公開市場操作)』と言います。
(コロナ対策だけで、国債を約60兆円新規発行していて、株式(ETF)は時価総額40兆円ほど保有、現在保有する国債は合計約500兆円ほどだそうです)
金融機関に戻された国債は、償還日にお金を受け取るため、政府はその資金調達のため、新たな国債発行や増税等の税金で企業や国民より徴収し、景気向上にはマイナス効果を生みます。
大量の国債を購入してもらうため、国債の金利が上がり、(10年国債の金利に連動する)固定金利が上がることがあるかもしれませんが、増税等で、結果的に企業や国民にその負担がかかってくることから、税負担は大きくなり、景気抑制となるため、結果としてやはり変動金利は上がりにくいと私は考えます。
次回に続きます。⇒変動金利で良い理由③④⑤
コメント