亡き母の事を思い出す・・・

亡き母の事を思い出す・・・

実は昨日、学校から帰ってきた長男君から『学校の先生が急死したの・・・あまり好きな先生ではなかったけれど、やっぱり人が亡くなるのは悲しいね・・・。持病とかも無くていきなり亡くなったから担任の先生もとても残念がってた。皆に説明する時にも泣きながらその先生が亡くなった事を皆に報告している姿を見ていたら、僕まで泣きそうになったよ・・・』と報告してくれました。

本当に人の命は儚いな・・・そう思います。

そんな事を思っていたら、11年前に亡くなった母の事を思い出しました・・・。

私の母は長い間、闘病生活をしていたから入退院を繰り返していました。

でも、今でも忘れられない悲しい日は突然にやってきました。

ある日、いつもの入院だと思って付き添っていました。そうしたら主治医の先生から父と私だけ呼ばれたんです。

主治医
『いきなりのお話で驚かれるかも知れませんが、落ち着いて聞いてください。実は入院前にしてもらった検査の結果、お母様は後、二週間ほどしか生きられないと思います』

突然の報告に、誰かに頭を殴られたような衝撃があり、頭が真っ白になったと同時に私の目からは大量の涙が溢れ出してしまい、止める事が出来ませんでした。

主治医の言っている事も理解が出来ずにこう聞き返しました。


『えっと・・・あの・・・どういう意味ですか?もう、二週間しか生きられないって事ですか?だって、今普通にぴんぴんしてるし・・・ちょっと言っている意味が理解できないんですが・・・』

主治医
『今は、そうですね・・・でも、後数日にかなり様態は変化してくると予想されます』

そう言われても、今の母が亡くなる事がどうしても想像できませんでした。

母は以前、違う病院で受けた足の手術の医療ミスが原因で動けなくなり、当事はまだ軽い糖尿病だったのが動けなくなってしまったことがきっかけで悪化の一途を辿っていました。


『様態がいきなり変化してくるとはどういう意味ですか?』

主治医
『お母様の足なのですが・・・殆ど、血が通っていません。だからこのまま放っておくと数日で足が壊死してしまい、その毒素が体中を回るので・・・敗血症の状態になると思います。そうしたら、人は直ぐに亡くなってしまうので・・・』


『なら足を切断は出来ないんですか?』

主治医
『本来なら切断するんですが・・・お母様の場合、心臓に不整脈があるので手術をしても術中に亡くなる可能性が高いんです』


『・・・・でも、それでは死ぬのを何もせずにただ待つって事ですよね?』

主治医
『・・・・こちらも色々な手を考えましたが、残念ながらそう言う事になります』

そう、説明がありました。母は医療ミスから殆ど歩けなくなってしまい、ずっと車椅子生活でしたが、母の足は見た目には普通でしたし、どうしても納得ができませんでした。

納得でずに沈黙が続き・・・そんな時に以前、母がこんな事を言っていた事を思い出したんです。

『もし、私に余命宣告とかがあったら絶対に隠さないで教えて欲しい』と・・・。

なので、主治医にその事を伝えることにしました。


『あの、母が以前、余命宣告があったら教えて欲しいと言っていたんです。だから、この話だけはしても良いですか?』

主治医
『いや・・・それは賛成できません。癌などで余命が数ヶ月あるなら良いですが・・・お母様の場合、ちょっと余命が短すぎるので・・・ご本人もショックを受けると思うので、余命宣告は止めた方がいいです』

この余命宣告を母に伝えられずに母は亡くなり、私は母が亡くなった後もこの事で苦しみました。もし本人が亡くなる事が分かっていたら何か伝えたかった事があったかも知れない・・・そう思っていたからです。


『分かりました・・・足が壊死をするとどうなるのですか?』

主治医
『相当な痛みがあるので・・・モルヒネや鎮静剤を入れる事になります』


『なら、母が絶対に苦しまないようにしてください。お願いします』

そう、私が言うと主治医は少し困った様子でこう言いました。

主治医
『そうですね・・・なるべくそうしたいのですが・・・あまりやり過ぎてしまうと安楽死になってしまうんです。日本でそれは認められていないんです。だから私達医師は、患者さんが生きる可能性を探して治療する事になります』

生きる可能性?・・・・亡くなるのを待つのに?

私の頭の中も心の中も、到底納得できませんでした。

この先、少しでも長く生きられるなら納得できましたが、余命は二週間・・・なのに苦しむ為の治療って何なんだろう・・・そう思ったからです。

一通り、主治医からの説明が終わり、母が待っている病室に向かおうとするのですが、流れっぱなしの涙をなかなか止められなくて、暫く廊下に佇んでいました。

どれくらいの時間を掛け涙を沈めたのか・・・暫くして母の元へ行きました。

そこにはいつもと変わらない母がいて長男君を自分のベッドの上に上げて遊んでいました。


『先生なんだって?結構長い時間話してたけど・・・』


『何か、今回の入院はちょっと長くなるかもって。検査の結果、ちょっと足が痛くなるかも知れないから、痛くなったら直ぐに言って下さいって言ってたよ!』


『そうなんだ!分かった!でもまぁ、この足は元々、痛いからね』

そう目の前で元気に話している母が二週間後に亡くなるなんて・・・どうしても想像できないし、悲しくて悲しくて・・・。その気持ちを押し殺しながら話していたら心臓が握り潰される様に胸が痛くて私の方が死んでしまうのではないかと思いました。母が長男君とニコニコしている姿を見ていたら込み上げて来る涙が我慢できなくなってしまい・・・

母に気が付かれない様に


『ちょっと、売店で長男君のお菓子とジュースを買ってくるね!』

そう言って病室を出た途端、また、涙が止まらなくなってしまいました・・・。

そこにたまたま居合わせた看護師さんが廊下で泣きじゃくる私の背中をそっと優しく撫でてくれました。その時の気持ちや光景やその手の温かさを思い出しながら書いている今でも涙が出てしまいます・・・。

その後、主治医の言う通り入院から二日、三日、四日と経つうちに見る見る母の様態は変化していきました。

見ていて一番辛かったのは、腐っていく足を痛がる様子でした。でも医師は生きる事は出来ない事が分かっていても、足の壊死を悪化させないように治療をしなければいけないんです。その為には抗生剤の点滴をします。でも、この治療の為の抗生剤の点滴が私には拷問に様に感じました。

この点滴さえ止めてくれればこんなに苦しまずに亡くなれるのに・・・。

この抗生剤の点滴を打ってる以上直ぐに敗血症にはならずに生かされるんです。でも、この生かされている時間は想像を絶する痛みだったと思います。

その拷問の様な時間が家族としても耐えられず、主治医にお願いしました。


『先生、この抗生剤を止める事はできませんか?この点滴を外せば楽に亡くなれますよね?』

主治医
『・・・そうですね、でも医師として治療を止める事は出来ません』


『なら、もっと痛み止めを沢山入れてください!』

主治医
『モルヒネは大量には入れられないんです・・・』


『なら、モルヒネ以外でどうにか、この苦しみを開放してあげられませんか?』

主治医
『意思の疎通は出来なくなりますが・・・鎮静剤で眠らせる事は出来ます』


『なら、それでお願いします』

私は迷いませんでした。

何故なら、意思の疎通が出来る状態でも、地獄の様な痛みから通常の意思の疎通なんて出来ないからです。

入院から暫くしては母は鎮静剤の為、意識がない状態になりました。

でも、抗生剤は続けなければならないので、余命二週間と言われていましたが、結果、一ヵ月半生きました。

でも、意識が殆ど無い状態の母が、真っ黒になった壊死した足の消毒の時には顔を歪めるんです。その姿は見守っている家族にとっても、母にとっても相当な痛みでした。

そんな母の闘病生活も終わりを告げます・・・。

いつもの様にお見舞いに行き、帰ろうとしたのですが、何故だかその日はまっすぐ帰りたくなくて病院の直ぐ近くにあるショッピングセンターに立ち寄り気分転換にと思い洋服を見ていました。その時、父が泣きながら『ママがもう危ない・・・だから直ぐに来て』と連絡があり急いで駆けつけるとまだ息がありました。もし、自宅に帰っていたら母の最期を見送ることが出来なかったと思います。

走って病室まで向かっていた私は息が切れてハァハァしながら、母の寝ているベッドに行き、気が付いたら横たわっている母の上に覆いかぶさるように母を抱きしめていました。

そしてやっと母にこう言えたんです。

『ママ辛かったね、ずっと言えなくてごめんね。でももう、楽になって大丈夫だよ。今までありがとう。大好きだよ・・・』そういった途端、私を待っていたかの様に安らかに天国に旅立ちました。

でも、その時に不思議な体験をしました。母の上に覆いかぶさっていた私の体に凄い衝撃が走って、私の体を何かが通過したのが分かったんです!!

それが今なら母の魂だと分かるのですが・・・その当事はその衝撃にとても驚きました。

母が私の体を通過する時に、私に『豊かさ』を残していってくれた事も後に分かりました。

私は母に小さな頃に抱きしめられた記憶が1回しかありません。飼っていた犬を私の持病の喘息が悪化すると言う理由から手放し私が泣きじゃくっていた時です。

そして、私が母を抱きしめたのも母が亡くなる時に泣きながら抱きしめたこの1回しかないんです。

母からのたった1回のハグも、私からのたった1回のハグも、どちらも私が泣いている時でした。

本当はもっと母とニコニコした笑顔で楽しくハグを沢山したかったです。

だから、この時に私は心に誓いました。もう絶対に後悔しない様に大切な人を沢山沢山抱きしめようと・・・。

大切な人を抱きしめられるのは生きている時だけなんです!学校の先生や母の様に明日命がある保障なんて何処にもありません。

だから、これを読んでくれている人には、恥ずかしがらずに大切な人を沢山抱きしめて欲しいと思います。

長くて悲しいお話だったと思いますが、この経験があるからこそ、今、私は息子達を沢山抱きしめ、沢山の愛情を注げています!

母は愛情深い人でしたが、それを表現するのがとても不器用な人でした。でも私はそんな母の娘に生まれて幸せでした。

『ママのお陰で、今大切な人をきちんと愛せています。ママ、ありがとう・・・』

この想いよ、天国に届け!

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